森 荘士(2期生 平成5年卒)
坂本塾第2期生。
上中学校⇒奈良高校⇒同志社大学経済学部卒。
現在(株)MUFG本店法人営業部門でバリバリ活躍中。
大学時代には坂本塾で講師も担当。
1.初めに(坂本塾との出会い)
出会いは中学2年生の2学期。その頃の自分は漠然と奈良高校へ行きたいとの思いはありましたが、中間・期末テストで思うような点数を取ることが出来ず悶々としていたところ、友人の誘いもあり入塾させて頂いたのが始まりです。
塾というものが初めての経験であり蓄積された知識も無かったのですが、私は授業で多くの質問はしなかったと思います。決して自分の理解力が人より優れていた訳ではなく、塾の風通しが悪かった訳でもありません。授業が分かりやすいのです。仕組みを理解すべきところと反復して覚えるべきところが明確で、自分の頭にスッと入ってきた記憶があります。その後自分の成長を実感する中で希望する奈良高校に合格するに至りました。
こう書くと非常にあっさりした感じがありますが、私が坂本塾生として過ごした1年半と講師としての3年間は、何にも替え難い経験です。
中学生の勉強について多くの先輩達から「将来の為、四の五の言わずやろう」とアドバイスを受けることと思います。私も同じ意見です。しかしどうしても勉強に前向きに取り組めない、踏ん張りたいけど気持ちがついていかないという困難に直面する日が来るかもしれません。
本日は私が当時経験したことに基づく「勉強する動機」についてお話させて頂きます。皆さんが壁にぶち当たった時の気休めにでもなれば幸いです。
2.「怒られるから」
勉強する動機は、知識の習得や資格の取得、希望する学校への合格等様々です。自分は当時奈良高校に合格したいという気持ちで勉強していました。しかしその一方で、怒られるからという後ろ向きの理由も動機の多くを占めていたように思います。
通常、勉強でも仕事でも内発的に行うことが良いとされ、伴う結果も違うとされています。内発的とは、自ら進んで目的意識を持ってという意味です。その反対が外発的。簡単に言うと「やらされ」です。当然、内発的に勉強することに越したことはありません。しかし「怒られるから」という外発的な理由で勉強することがダメなのかというと、私の個人的な意見としてはダメではないし、やらないより100倍良いと思います。
坂本塾は厳しいでしょう。やるべきことを怠ると厳しく叱責されたものです。もう怒られたくない、恥ずかしい思いはしたくない、これは志が低いようにも映りますが立派な動機だと思います。
それでは怒る側はどうなのか、参考までに少しだけ披露させて頂きます。
私は大学に合格した後に坂本先生からお声かけ頂き、講師を始めることになりました。先生からは「荘士、講師やらんかい」の一言。教え方について細かに指導があるかと思いきや、「荘士、数学やらんかい」と二言目。今思うと塾の確固たる方針と先生のマネジメントがあってこそ、なのですが、当時はかなり自由な職場であるとの印象を持ちました。
しかし、講師に対し一見放任のように思われる先生から一つだけ言われ続けたことがあります。それは、「中途半端に怒るな、怒るときはしっかりと」というものです。未熟な私はその意味を深く理解していなかったように思いますが、今となっては、目的を持った人が集まる場所では適度な緊張感が必要であり、それが次への動機にも繋がると、個人的な解釈を含めて理解しています。
少々小難しくなりましたが、要するに勉強に対して前向きになれない夜は、一晩悩んだ後に怒られるからやると腹をくくることも一興だということです。ここまでくると「四の五の言わず」と大きく違いませんね。少し角度を変えただけです。更に付け加えると私はサラリーマン14年目で世間的には働き盛りです。しかし、未だに外発的な動機で仕事に取り組むことが多々あります。そんな時は、「やらないよりは100倍良い」と自分に言い聞かせています(苦笑)。
3.「康介さんを手ぶらで帰らせるわけにはいかない」
ご存知の方も多いと思いますがロンドンオリンピック競泳メドレーリレーの選手が銅メダルを獲得した際に発した言葉です。世界的なスイマーである北島康介選手を無冠で終わらすわけにはいかない、チーム一丸となってメダルを獲得しようとの思いであり、試合へ挑む強烈な動機です。
人は、人との関係性を動機に大きな力を発揮することがあります。好成績を残したスポーツ選手が良き指導者、良きライバルそして良きチームメイトのお蔭と耳にすることがあるでしょう。
私は当時、人と環境に恵まれていました。常に前向きで「ベストを尽くす」という言葉が口癖の坂本塾の友人、数学の楽しさを嫌と言うほど教えてくれた坂本塾の講師、そして「やってるやん!」と必要以上のテンションで褒めてくれる坂本塾長等。この仲間と合格の喜びを分かち合いたい、この先生についていきたい、と感じたものです。
皆さんは考えたことが無いかもしれませんが、なぜ毎年坂本塾の多くの先輩が希望する高校に合格できるのか。突き詰めるとテキストが良いからでもなく、もともと勉強ができる生徒が多いからでもありません。それは、人を含む環境に理由があると思います。今の環境が非常に恵まれたもので自分の成長を促す絶好のチャンスであることは間違いありません。
少々説教くさくなりましたが、「take the chance!」(注)takeは能動的な意味が含まれますね、正しくは英語の先生に聞くように。
4.最後に
私が好きな思考に「プランドハプンスタンス(計画された偶発性)」というキャリア論があります。キャリアとは直訳すると「経歴・職業」です。これまた詳しくはネット等で調べて頂きたいのですが、簡単に言うと選り好みをせずに目の前のことに最善を尽くすことで自分のキャリアが形成されていくとの意味合いです。
多少強引に中学校生活に置き換えた場合、あらゆることに貪欲に取り組むということでしょうか。苦手意識があっても、音楽の授業に好奇心を持って下さい。ヴィバルディ「春」やシューベルト「魔王」があなたの人生に厚みを持たせるかもしれません。
結局「四の五の言わず」ってことかと思う方もいるかもしれませんが表現はともかく「そういうこと」です。今、歯を食いしばって頑張った経験が必ず生きてきますと、耳にタコができるくらい聞いていると思いますが、これは本当に「必ず」ですから。
寄稿の機会を与えて頂きありがとうござました。坂本塾の益々の発展を願っています。